構造解析

大スパン構造物

サッカー場や野球場などのスポーツ施設や展示場などの建築物は、スパンが100mを越えるような事例が少なくありません。このような屋根は、スペーストラス、ケーブル、膜などの構造形式によって実現されることが多く、その部材数は膨大なものとなります。
一般に、大きな屋根は柔らかく、風外乱に敏感である場合が多いため、風荷重が固定荷重、温度荷重、地震荷重を上回る変形・応力の発生をもたらすことも少なくありません。この場合、屋根に作用する外力の確率統計的情報を風洞実験により調査し、それらの情報を基に風圧の時空間的な分布をシミュレートして応答解析することがしばしば行われます。

弊社では、風洞実験から応答解析までを一貫して行い、大きな屋根の応答変位や応力の情報を提供します。

  • 大スパン屋根風応答解析の事例(鉛直方向の最大変位分布)

    大スパン屋根風応答解析の事例(鉛直方向の最大変位分布)

鉄塔および送電線の応答解析

送電鉄塔および送電線は、 私達の生活で使用するエネルギーを運ぶライフラインとして重要です。 また、送電鉄塔や送電線は私達の身の回りだけでなく、山岳地などの過酷な自然環境にさらされる場所にも建設され、地震、強風、氷雪などの外乱に対しても十分な強度あるいは耐力を要している必要があります。
送電用鉄塔および送電線は、 多くの近接した固有振動モードを持ち、 地震や強風などの動的な外乱に対して弾性的な応答を求めるだけでも 容易ではありません。
弊社では、これらの動的な外乱に対する応答を求めるシステムを開発し、多くの解析成果を 電力事業関連会社に提供しています。

  • 送電用鉄塔および送電線の振動モード解析事例

    送電用鉄塔および送電線の振動モード解析事例

  • 鉄塔頂部における線路方向の地震時応答加速度波形の事例(60秒間)

    鉄塔頂部における線路方向の
    地震時応答加速度波形の事例(60秒間)

  • 鉄塔頂部における線路直交方向の強風時応答変位波形の事例(600秒間)

    鉄塔頂部における線路直交方向の
    強風時応答変位波形の事例(600秒間)

上図は、地震時および強風時の応答波形を示したものです。
加速度と変位の違いがありますが、外乱によって応答性状が異なる様子が伺えます。

  • 解析的に推定した送電線ギャロッピング振動の事例

    解析的に推定した送電線ギャロッピング振動の事例

氷雪が付着した送電線の風によるギャロッピング振動は、過去に多くの理論的、数値的および実測による研究が行われていました。
弊社では、送電線の幾何学的非線形性ならびに風の乱れを考慮して、 ギャロッピングの発生要因、着氷雪の向きの影響、 風の乱れの影響などについて明らかにし、応答の評価指標を提案しました。

免・制振建物の応答解析

免震建物は地盤と建物の間に柔らかく減衰性能を有する免震層を付加し、長周期化することで地震による応答を低減する建物で、兵庫県南部地震以来急速に普及し、現在では、歴史的に重要な建物の耐震対策、一般住宅や多くの超高層集合住宅にも適用されるようになっています。
また、上部構造の重心と免震層の剛心を一致させることによって、 地震時に建物に作用する捩りモーメントを抑制できるため、 矩形以外の平面形状を有する超高層建築物においても適用される事例が多くなってきています。一方、対象とする外乱を風とすると、長周期化による風力増大、風力自体に有する捩りモーメント、 平均風力による免震部材のクリープ等、対地震にはない検討が必要です。
制振建物は、超高層建物や鉄塔等の塔状構造物の日常的な風による振動の抑制や、鉄塔の耐震補強等に用いられ、現在では多くの超高層建築物の居住性能向上を目的に用いられています。制振システムには、オイルダンパー系、履歴ダンパー系、AMD、TMD等、多くのシステムがあり、求める性能に応じて適用されます。
免震建物や制振建物は、 比較的小さな外力でも非線形挙動を示すため、 応答を精度良く評価するためには、種々の特性を有する免震部材や制振部材をモデル化し、主構造と組み合わせる必要があります。
弊社では、表層地盤の応答を考慮した地震動の評価、風洞実験等に基づく風力の評価、免震部材や制振部材のモデル化を行い、地震応答解析ならびに風応答解析し、お客様に建築物の応答の情報を提供します。
下図は、免震建物の地震応答解析、クリープ変形を考慮した風応答解析、ならびに制振ブレースを組み込んだトラス鉄塔の地震応答解析の事例です。

  • 免震建物の地震観測結果と応答解析結果の比較事例

    免震建物の地震観測結果と応答解析結果の比較事例

  • 免震建物のクリープ変形を考慮した風応答解析結果 -復元力特性の事例-

    免震建物のクリープ変形を考慮した風応答解析結果 -復元力特性の事例-

  • 制振ブレースを適用した場合のトラス鉄塔の層せん断力の低減効果の事例

    制振ブレースを適用した場合のトラス鉄塔の層せん断力の低減効果の事例

風による部材の疲労損傷評価

鋼材に作用する応力が降伏応力以下であっても、それが繰返し作用する場合には亀裂や破断が生じることがあります。この現象を疲労損傷あるいは疲労破壊と言い、構造物には多かれ少なかれ常に疲労損傷が累積されます。鋼管トラス鉄塔の部材、風車タワー、照明柱および避雷針等の直接風にさらされる部材に対してしばしば疲労損傷評価が求められます。
疲労損傷評価を行うためには、供用期間にどのような風速にどの程度の時間さらされるか、その風速によってどのような応力が発生するか、さらにその応力によってどの程度の疲労損傷が蓄積されるかといったことを評価する必要があります。風速の作用時間の評価においては台風シミュレーション・気象データの分析が、発生応力の評価には応答解析やFEM解析が、疲労損傷度算定にはS-N曲線がそれぞれ必要となり、多岐に渡る解析が必要となります。
弊社では、これらの解析を全て網羅するシステムを開発し、お客様にその結果を提供しています。
下図は、フランジ継手のボルトの疲労損傷評価の事例です。

  • 供用期間における風速の作用時間の算定例

    供用期間における風速の作用時間の算定例

  • ボルトに作用する力を算定するためのFEMモデル

    ボルトに作用する力を算定するためのFEMモデル

  • 外力とボルトに作用する力の算定例

    外力とボルトに作用する力の算定例

地盤の応答解析

わが国は世界でも最も地震が多発する国の一つであり、多大な被害をもたらした兵庫県南部地震以降も、中越地震、能登半島沖地震、宮城県南部沖地震、中越沖地震などの地震がしばしば発生し、 私たちの生活に影響を与えています。 このような地震は、地表面から10km~数100kmの深さで発生し、このとき発生する地震波は地球内部を伝播し、やがて地表面に達します。 表層に入射した地震波は表層内で反射・屈折を繰り返し、その振幅や周期特性に変化を生じ、継続時間も長くなり、地震の規模が大きい場合には、建築物等に多大な被害を与えることになります。
したがって、地震に対する建築物の設計を考える場合には、震源における地震波の特性だけでなく、その伝播経路、ことさら表層地盤の地震による応答を適切に評価することが重要です。さらに、軟弱な地盤においては、液状化を伴う地盤の応答評価、地盤の変形に伴う杭の応力評価も必要となります。
弊社では、このような地盤の応答解析を行い、免震建物や制振建物、さらに高さ60mを超えるような建築物・鉄塔・煙突・風車タワーの設計のための入力地震を提供する他、地盤の変形に伴う杭の応力の提供、さらにこれらの構造物の応答解析を行っています。
下図は、建設省告示1461号に定められている開放工学基盤上のスペクトルから作成した仮想地盤の応答解析を行った事例です。

  • 開放工学基盤における加速度波形の事例

    開放工学基盤における加速度波形の事例

  • 開放工学基盤での加速度応答スペクトルの事例

    開放工学基盤での加速度応答スペクトルの事例

  • 土質の動的変形曲線の事例

    土質の動的変形曲線の事例

  • 地表面における加速度波形の事例

    地表面における加速度波形の事例

  • 最大加速度および相対変位の事例

    最大加速度および相対変位の事例

モンテカルロ法による台風シミュレーション

南方の海洋上で発生した台風は、平均的に我が国の西側には年に2~3度、東側には1~2度接近します。この台風は、我が国に多くの降雨と強風をもたらし、 時には多くの災害を誘発します。
建築物の設計風速は、 数十年に渡る観測記録を基に、確率統計的な手法により推定したものですが、 供用期間の長い建築物に対する設計風速を推定するには必ずしも十分な情報とは言い難いものがあります。
また、建築物の骨組み、制振デバイスおよび免震デバイスの疲労損傷を見積もるためには、台風通過時の強風の計時変化の情報も必要となります。
Monte Carlo法を利用した台風シミュレーションは、このような要求の下に提案されたもので、多くの研究者によって改良が施されてきています。また、その成果として、 ASCEなどではこの手法を用いて設計風速を定めています。
弊社も、先人の方々の研究に習いつつ、 独自の研究成果を取り入れたシステムを構築しました。

下図は、再現期間10年として台風シミュレーションにより発生した台風の経路を表したものです。このように、弊社の台風シミュレーションは日本全国をカバーしたシミュレーションが可能です。

  • 再現期間10年の台風シミュレーションによる台風の経路

    再現期間10年の台風シミュレーションによる台風の経路

下図は、横浜を対象地として地表面粗度区分II地上10mの高さに換算した再現期間100年の年最大風速の非超過確率と風速の計時変化の事例を示したものです。

  • 台風シミュレーションによる年最大風速と非超過確率の事例

    台風シミュレーションによる年最大風速と非超過確率の事例

建築物の固有振動計測

建築物の振動特性を把握することは、その安全性や居住性能を評価する上で重要です。
起振機や人力での加振による振動測定や常時微動測定に基づいて、構造物の固有振動数や減衰定数などの振動特性を推定します。

  • 建築物の固有振動計測
  • 自由振動波形と固有振動数および減衰定数の推定事例

    自由振動波形と固有振動数および減衰定数の推定事例

  • パワースペクトル密度、固有振動数および減衰定数の推定事例

    パワースペクトル密度、固有振動数および減衰定数の推定事例